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名前のない日記

俺の俺による俺のための憑き物落としをしています。

資生堂ショックは「子ども持たない派vs子ども持つ派」の戦いの始まりでは?

資生堂ショック」なるワードが今日のホッテントリを賑わせていたので、いくつかブクマしてみた。

資生堂ショック報道への反応のズレ
綺麗事だなあ、という印象。 どうあったって、企業は社員に育児なんて出来..
「おはよう日本」の「資生堂ショック」特集 育児支援制度の改革とは - ライブドアニュース

この資生堂ショックについては一番下のリンクがよくまとまっている。

9日放送の「NHKニュース おはよう日本」(NHK総合)で、大手化粧品メーカー・資生堂が着手している、育児支援制度の方針転換を特集した。


番組では、「“資生堂ショック” 改革のねらいとは」と題し、資生堂が進める業務改革を特集した。資生堂は他の企業に先駆けて、育児休暇や時短勤務を導入してきたことで有名だ。しかし今年4月、こうした方針を転換し、育児中の社員にも平等な勤務シフトやノルマを与えるとしている。


(中略)


制度利用者が増える一方で、資生堂の国内売上は2006年から2014年の間に約1000億円も下がったという。経営陣は、美容部員がかきいれどきに店頭にいないことも業績悪化の一因と受け止め、制度改革の必要性を考えるようになった。また、子育てをしていない美容部員に遅番・土日勤務の負担が集中することもあり、「不公平だ」「プライベートの時間がない」との声も上がっていたという。


こうした事態を受け、資生堂人事部は2013年、子育て中の美容部員にあるDVDを配布した。執行役員の関根近子氏はそのVTR中において、育児休暇を取ることが月日の経過とともに当たり前となってきたと指摘した上で、社内の現状について「甘えが出てきたりだとか、(育児休暇を)取るという権利だけ主張しちゃったり」と苦言を呈している。


このDVDは、短時間勤務の利用者でも他の社員と同じく、月2日間の土日勤務、月10日間ごとの昼番遅番勤務を基本とするという内容も伝えている。


「おはよう日本」の「資生堂ショック」特集 育児支援制度の改革とは - ライブドアニュース

単純に見ると、育児支援制度の後退と思ってしまうんだけど、そうじゃないと増田は指摘する。

資生堂離職率を公表しており、2013年度の国内資生堂グループ(管理・総合職)で3.2%だ。2014年度4.2%。


しかし、結婚・出産・育児理由は、0.03%にすぎない。2014年度は、ついに0.00%になった。


美容職で、離職率2013年度 3.1%(結婚出産育児理由0.80%), 2014年度 3.7%(結婚出産育児理由1.00%)。


1990年(25年前)には育児休業を3年に。
1991年(24年前)には時短勤務(育児時間)導入。
1993年(22年前)には介護休業、介護時短導入。
2003年(12年前)には社内保育所を設置。
2005年(10年前)には子供介護休暇導入。
2008年(7年前)には時短を小学校3年(満9歳)まで延長。


他にも、育児期間中の転勤への配慮、配偶者の転勤に伴う異動考慮、等など。


「企業内保育所設置!」に「そこは資生堂が12年前に通った道だ……」とかやってほしい。


あえて書かないが、ググれば復職率・定着率の高さにたぶんビビると思う。(ヒント、9割は超えてる)


化粧品業界の最前線に立つ一万人以上の女性の集団をコントロールして、離職率をここまで抑えているのは驚異的だと思う。


資生堂ショック報道への反応のズレ

育児支援策について日本では最先端企業、らしい。俺は知らなかったけど、確かに業態的にもイメージしやすい。

この増田によれば、この施策は「ガス抜き」ではないか、と言うのだ。

理念だけでは回らない現場に寄り添ったガス抜き施策じゃないかな、と思う。


ぶっちゃけた話、出産育児には、個人で大きな差がある。


露悪的に言えば、婚期を逃したお局様みたいなBC(ビューティーコンサルタント)は、キャリア的には実績もあるしバリバリ働く。


あっちで短時間、こっちで短時間、結局土日や遅番は子供の居ない連中で回すんかいという不満が現場に蓄積される。


「キャリア指向」だけではなく「育児もキャリアも」でやりくりして土日に出ている「育児女性」にも不満が出る。


産後2ヶ月後には私は働いていた!半年も休んだ上に短時間とは軟弱だ!とソコココにそういう空気が流れる。


結果、「出産育児理由では無いんですが」と「職場で働き辛い(一身上の都合)」と、辞めていったりする。


資生堂ショック報道への反応のズレ

……わかるなぁ。いやほんとそうなんだ! 溜まるんだよ不満てやつは!



 ***


ちょっと前に子供は人生で一番高い買い物だと思うという増田がホッテントリを賑わせたのを覚えている人はいるだろうか。この増田は「子どもは人生で一番高い買い物だ。合理的に考えてそれを買わない選択をした自分たちのような人を「人じゃない」扱いをするのはやめてくれ」と主張し、多くの共感と反発を呼んだ。

コスパ云々はともかくとして、「子供を持つ」ということは、徐々に世の中のスタンダードじゃなくなりつつあるのだ。

会社で働いている人、みんながみんな子どもを持つわけじゃない。女性男性を問わず、子育てを理由に戦列を離れる権利を得られるのは子供を持つ選択をした人間だけだ。

子育て者が空けた穴を埋めるのは誰なんだ。結局子どもがいない俺たちが割を食うんじゃないか! と子供を持たない選択をした人たちが考えるのは無理からぬ話だ。

彼らのような人たちが会社を回してくれているからこそ、子育て者は休業を取ることが出来る。どんな理想論を振り回そうと、これだけは動かしがたい現実だ。彼らへの配慮と見れば、資生堂の施策は物凄く納得がいく。

こういう現実は、どこの会社でも水面下では起こっている。俺の会社でも似たような話はあちこちから聞こえてくるが、制度を利用する人間の絶対数がまだ少ないから表面化していないだけだ。

充実した制度を持ち、制度の理解と利用が進んでいる資生堂だからこそ、こういうところに切り込まなければならなかったんだろう。


 ***


じゃあ、みんなが幸せになるためにはどうしたらいいんだろう。どうしたら、子育て者が気持ちよく休めて、子育てしない人も気持ちよく働くことができる?

そもそも、なぜ「子育てしない人にしわ寄せがくる」的な話になるのか。

本来なら、誰かが長期的に戦列を離れることになるなら、代わりの人員を補充すればいいだけの話だ。しかし、こういう育児休業みたいな、将来的にその人自身が戦列に復帰することを想定しなければならない場合、話はそう簡単ではない。

2年後に元の人が戻ってくるからアンタはそれまでしか雇わないよ(もしくは他部署に行ってね)。その期間だけよろしく!みたいな都合のいい人材は基本的にはいないのだ。

増田でも書いてあるけど、資生堂では「カンガルースタッフ」という派遣社員がその穴埋め役のようだ。

そういう派遣やバイトで賄えなければ、社内の人間が頑張るしかない。これがしわ寄せでなくてなんだろうか。

職場側から見た単純な解決策は「補充人員を入れられるようにする」ことだ。だけど、それだと育児休業者が戻る場所がなくなって困ってしまう。

じゃあどーすりゃえーねん。


 ***


以下、私見。

俺は、会社を辞められるようにすればいいんじゃないかと思う。一旦会社辞めて、また働けるようになったらその時入れる会社に入ればいいじゃん。

そうすれば会社側も大手を振って補充人員を入れることが出来るので、現場の負担は幾ばくか軽減出来るはずだ。

問題は、一度辞めたら同条件以上の企業に就職することが難しくなる、終身雇用の名残とも言える社会の空気だ。

似たようなことを、はてなの皆さんが嫌っているちきりん氏が言ってた。

終身雇用を前提として、すべての社会問題を解決しようとするからだよね。


その(無茶な)前提条件を外さないから、睡眠時間もまともにとれなくなるような過酷な生活を「仕事と家庭の両立」とか言って、みんなで目指すことになる。


子育てで一回、会社を辞めたら、同じレベルの報酬がもらえ、同じレベルのチャレンジと成長機会が得られる仕事には、もう二度と就くことができない。


だからどんなに過酷な状態でも仕事は辞めず、ヨレヨレになりながらも「家庭と仕事を両立させねば! ブヒー!」みたいな話になる。


日本の労働市場における「抱え込み発想」が生む両立神話が、多くの人を疲弊させてる。


(中略)

「 23歳で新卒就職した会社に 65歳までの 42年間、勤め続けなければならない」という前提の上で家庭と仕事をむりやり両立させようとする社会ではなく、


数年間のインターバルや、非正規雇用の時期や、(夢を追うとかモラトリアムとか含め)人生において個人的な試行錯誤をしていた数年間を挟んでも、いつでもやりがいと適切な報酬を得られる仕事に戻れる、そういう流動性の高い社会をこそ目指すべきでは?


仕事と家庭の両立なんて、目指すのやめたらどう? - Chikirinの日記

個人的には「育児支援と、それに伴う現場の軋轢」って、問題の根底には終身雇用的な考え方があると思ってる。

会社側には「こいつを雇い続けなければならない」という強迫観念が。

従業員側には「この会社に居続けなければならない」という強迫観念が。

増田が主張する男性が育児休業を取れるようにするのは大事なことだけど、そしたら男性側の会社で同じ「誰かが埋め合わせをしなければならない」問題が起きるだけだ。こんなのは根本的な解決とは言わない。

というわけで、俺はどちらかと言えば、この増田の意見に近い。

企業は従業員の育児生活、つまり私生活まで面倒見るべきというのは、かつての日本企業が伝統的に「企業は従業員の『親代わり』として私生活まで面倒を見るもの」とされていた故の発想だと思うけど。


それこそ昔は企業は従業員の結婚まで面倒見ていたわけで、育児生活まで面倒見るべきってのはその延長の発想だよね。


でもそういうのは「従業員も子として親=企業を尊敬し一生仕えるべき」ってのとセットだったわけで、そういう発想が古臭いだの社畜だのと言われ、企業と従業員の関係はただ仕事上の雇用関係があるだけだ、ビジネスライクでいい、


仕事以外の関わりなんかいらん、転職も自由だという世の中になりつつあるのに福利厚生部分だけが相変わらず「企業は従業員の『親代わり』として以下略」って発想が残ってるのは、ただの子=従業員側の甘えではないだろうか。


(中略)


最終的には、昔通りに子=従業員が親=企業に社畜として一生仕える代わりにその恩恵としての保護を受け取るか、親も子もない、対等でビジネスライクな関係を築くか、どちらかにしか納まらないと思う。


綺麗事だなあ、という印象。 どうあったって、企業は社員に育児なんて出来..

まぁ実際はここまでドラスティックに変えるのは無理だし、いきなり社会は変わらないだろうから、育児支援策の試行錯誤は続けていくべきだし、男性側の育児意識改革にはチャレンジするべきだ。

だけど、今後も「子ども持たない派vs子ども持つ派」の軋轢は、社会の様々な場所で展開されていくと思う。今回の資生堂の件は、その戦端をひらくもののひとつであるかもしれない。今は会社バッシングや政府バッシングの方が主流っぽいので、日本はまだまだ平和だなと思う。興味深くウォッチしていきたい。