読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

名前のない日記

俺の俺による俺のための憑き物落としをしています。

「草の者、どうするのかなぁ」

朝起きて、何気なくスマホのニュースアプリを開いたら目に飛び込んできた文字。

「ねぇ」
「うん?」

子供二人のパンを焼きながら奥さんに話しかける。昨日夜遅くまで起きていたせいか、目覚めの良い彼女には珍しく目が開いてない。

KAT-TUN田口淳之介っているじゃん」
「いるね」
「脱退だって」

えぇー、と少し覚醒した声。

「何人目だよ」
「知らん」

あとで調べてみたらKAT-TUNを脱退するのは田口君で3人目のようだったが、そんな情報がすっと脳内検索でHITするほど俺はKAT-TUNに興味があるわけではなかった。
俺よりも少しだけ彼らに興味のある彼女は、赤西でしょ、えーっと、あと誰だっけ、などと頭を悩ませている。子供はそんなことお構いなしに食卓によじ登ろうとしていたので、乗っちゃ駄目でしょ、と俺は下の子を床に下ろした。

「ていうか、田口って誰だっけ」
「おい」

知らんで驚いとったんかい。

「草の者だよ」

俺が言うと、「あぁ」と得心がいった顔をする。

俺の家での田口君は「KAT-TUN田口淳之介」というよりも、「草の者・加賀蘭丸」なのだ。リーガル・ハイの小御門の切り札を、いい意味で軽く演じる田口君を俺たちは高く評価していた。彼が画面に登場するたびに「草の者、出たよ!」と画面に向き直るのが俺たちの、リーガル・ハイの楽しみ方の一つだった。

「脱退っつーか、事務所も辞めちゃうらしいよ」

ニュースにはそう書いてあった。来春。その後、彼がどうするのかは報じられてはいなかった。もしかしたら彼自身も決めてはいないのかもしれない。
29歳。俺の3つ下だ。

「草の者、どうするのかなぁ」

それはリーガル・ハイのことだったのかもしれないし、田口君の進退のことだったのかもしれない。
パンが焼きあがったので、それを確認せずにその場は終わった。



トピック「KAT-TUN」について