名前のない日記

俺の俺による俺のための憑き物落としをしています。

「あなたといると(自分が劣等感を抱かなくて済むから)落ち着く」

32歳童貞(当時)の彼と付き合い始めた

正直上の増田だけなら特に何も言うことがなくて「うーむ」で終わる話だったんだけど、下の増田を読んで少し思い出したことがあるので書いてみる。




俺の友達の話だ。顔は平均点以上で、コミュ力も(表面上は)高く、中学生ぐらいから彼女を切らしたことがない。ダサくてモテない童貞の俺とは真逆の人間だったが、大学卒業後も不思議と付き合いが切れていなかった。

その彼と数年前に一度飲みに行ったんだけど、「実は離婚を考えているんだ」と言う話になった。

詳しい話は省くけど、奥さんが働きもせず子供の面倒もろくに見ない、いつも塞ぎ込んでいてたまに間欠泉的にヒステリックになる、このままだと子どもに悪影響があるから別れたいと思ってる、というような話だった。

彼と彼の奥さんは、大学時代に同じサークルの先輩後輩だった。地味で大人しく引っ込み思案だった後輩の面倒を見る先輩、という間柄。俺は彼らと別の大学だったので彼からの伝聞でしかないのだが、まぁ何にもなければ結婚するだろこいつら、とは思っていたし、実際そうなった。一つ想定外だったことがあったとすれば、彼女の就職が上手くいかず、1年も経たずに会社を辞めてしまったことだ。彼が言うには「職場で上手く折り合えなかった」とのこと。

彼はそれなりに名のある企業に就職できていたから、将来的に彼女を含む家族を養っていくことが十分に可能な稼ぎを得ていた。彼もそう思ったからこそ、会社を辞めてしまった彼女と結婚することを決意した。別に二馬力で稼いでもらわなくても、家を守ってくれればそれでいいよ、としたわけだ。

やがて彼らの間には子どもが生まれ、もうすぐ2才になろうかと言う頃だった。そんな矢先、彼の「離婚するかも」という告白だった。

「育児でストレスがたまってるんじゃないの?」と聞くと「あいつは元々子どもの面倒を見るのが嫌いなんだ」と返ってくる。

彼は稼ぎがある割に時間が自由になる仕事なので、彼が言うには「可能な限り家にいて子どもの面倒を見るようにしている」らしい。

「子どもを見てるから外に遊びに行って来たら」と彼が提案しても「外には行きたくない」と言うらしい。元々引きこもりがちな性格で、遊びに連れ出してくれるような友達もいない。

「奥さん鬱なんじゃない?」というと「病院に行ってる」と返ってきた。

そんな状態の奥さんをほっぽりだす気かよ、ということをオブラートに包んで伝えると、

「このままだと子どもにとっても良くないと思う。彼女も大事だけど、一番に優先すべきは子どもだろ」

返す言葉がなかった。

そこでふと、脳裏をよぎった言葉があった。

「あいつは俺がいないと何もできないからな」

思い返すと、彼はよくそういう意味のことを言っていたように思う。

前の彼女の時もそうだった。中学から高校卒業くらいまで付き合っていた彼女にも似たようなことをよく口にしていた。その彼女も、見た目には彼とは不釣り合いな印象の地味な子だった。彼が大学受験に成功して上京する時に別れたと聞いていたが。

そういえば、俺に対しても彼はそうだった。「お前のこういうところが駄目なんだ」と、俺は彼に何度も言われた。ファッションや性格、立ち居振る舞いのこと、ありとあらゆることを。

あれは俺や彼女に対してのみだったか? 彼の交友関係を思い浮かべる。彼らに対しても彼は少なからず「そう」じゃなかったか?

そうか、そういう奴だったよな。

俺は一人で妙に納得してしまった。




今になって思い返すと、要するに彼は「自分が相手に対して心理的な優位性を保ってないと人と付き合えない」奴だったんだと思う。対等な相手や自分の方が相手に心理的劣位に立たされる相手との関係性を忌避する傾向もあった。

これって掘り下げると「自信」の話になってくる。自分に確固たる自信がないから、心理的劣位に立たされるのを酷く嫌う。

だからそういう人は、深く付き合う相手に対してはまず初めに「順位づけ」をする。「自分の方が上だ」と相手に示して、それを受け入れてくれた相手とだけ付き合う。どうやって示すかっていうと、これまた色んな方法があるんだけど、一つのメジャーな手法としては彼のように相手をまず「否定」することから入るんですね。

俺はこの増田(32歳童貞(当時)の彼女さんの何が引っ掛かるのか解説する)を読んで、確かにそういう風にも見えるな、と思った。書かれていないことはわからないが、書かれていることだけ見れば方法論として理解できる、という話だ。

それが上手くハマるケースもある。上にいたい人と下にいたい人*1が付き合えば、それはそれで幸せなわけだ。

しかし、そういうアプローチは往々にして相手の自尊心を損なうことがある。それが行き過ぎれば、世に言う「モラハラ夫」「モラハラ妻」の出来上がり、となってしまう。

もちろん、元増田がそういう人かどうかはあれだけでは判断できない。「痘痕も笑窪」という言葉もある通り、人は人のスペックだけで人を判断しているわけではない。

しかし、こういうのは濃淡の問題で、少なからずこういうミスマッチは誰の身にも起こり得ることだ。そういう意味で、元増田の彼氏に対するアプローチに賛同したり、嫌悪感を示す人間がいるのも当然だと思う。




よく「あなたといると落ち着く」とか言うじゃないですか。これって要するに「あなたとわたしの関係性が心地いい」って意味なんですよね。気を遣わなくていい、とか。安らぐ、とか。

でも、自分に根本的な自信を持てないある種の人にとっては「あなたといると(自分が劣等感を抱かなくて済むから)落ち着く」みたいになっちゃうケースもあって、そういう人はまぁまぁの確率で相手の自尊心を破壊しにくるから、付き合う人間は地獄を見るわけです。

元増田がそこまでの人かはわからないけど、俺の友人の彼については、正直俺としてはかなりの確信を持っている。

ほどなくして彼は離婚し、子どもの親権は彼の方がとった。彼女の方は実家に戻ったとだけ聞いているが、今ではもうその彼とも付き合いが途絶えてしまったので、その後のことは俺にはよくわからない。彼と彼の子どもがどうなったのかも、知る由もない。

*1:もうちょっと良い言い方をすると「守ってやる」人と「守られたい」人、みたいな。