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名前のない日記

俺の俺による俺のための憑き物落としをしています。

「君の膵臓を食べたい」について、あまりまとまってない感想

この前、出張の帰りに「君の膵臓を食べたい」を読んだ。正直大した感想はない。内容も新味には欠けるけど、どこか往年の泣き系エロゲを読んだような気分で、個人的にはすごく懐かしくなった。別に「似てる」とか言いたいわけじゃないけど、「加奈」とか「kanon」の真琴とか。真琴はちょっと違うかな。文体は「戯言」初期の西尾維新さんとかぽい気がする。不謹慎ネタとか。

こういう「泣けます!!!」的に宣伝された作品って、読んでも泣けなかった時、もれなく低評価になっちゃうから難しいよなぁ。正直俺は泣けなかったんだけど、つまらなかったとも思わなかった。しかし、この作品自体は間違いなく「読者を泣かせる」ために書かれてるので、「泣かせられなかったら負け」になっちゃうのはしょうがないのかな、という気もする。レビューに低評価が並んでしまうのも理解できる。

「余命一年の人間がこんなに元気なわけないだろ」ごもっとも。まぁ、このストーリー展開なら無理無理病気関係でリアリティ出さなくてもよかった気もする。ファンタジックな理由づけにして、読者のリアリティラインのハードルを思い切り下げてしまってもよかったのかも。しかし、現代劇の範疇に収めたいなら難しいし、何より「膵臓を食べたい」の決め台詞を入れ込むのが難しくなってしまう。それありき、みたいなとこあるし。

主人公の名前を隠すやり方もうまく働いてなかった。「相手が自分との関係性をどう位置付けているかを想像することで、『自分』として誰かと関わることを拒否する」という主人公のキャラクター性(と最後の成長)を表現したいのはわかるんだけど、この書き方だと正直「名前に目立った仕掛けがなかったガッカリ感」の方が勝っちゃってる。

主人公とヒロインはともかく、脇役の二人(ヒロインの元彼と親友)のテンプレ感もちょっとどうかとは思った。ここまで掘り下げる気がない書き方されるくらいならいっそ出さない方が良かったんじゃ、とか思ってしまうレベル。率直に言うと、二人とも何に対して怒ってんのかよくわかんない、ただの頭おかしい奴になっちゃってる。怒るなら怒るだけの理由づけの描写を書き込んでほしい。

彼女の母親の前で泣くシーンもキツい。ていうか、そこら辺あたりから改行大目になるシーンが続くのがキツい。一つの小説の中で多用されるとしんどい手法だと思う。

とまぁ文句を言い出したらキリがないんだけど、ヒロインが「主人公と一緒にいたい」と思った理由づけは良かったなぁと思う。

あっけらかんと死を受け入れているように振舞うヒロインが、主人公と一緒にいたいと思ったのは「自分の死を直視したくない」から。自分が一年後に死ぬことを知ってる身内と一緒にいると、否応なく自分が死ぬことを思い知らされてしまう。受け入れなくてはならなくなってしまう。そこからの逃避として、親しくもなく、誰にも興味を持たないようにしている中二病を患う主人公を「利用」していたわけなんですね。こういうキャラ造形は人間らしくていいなと思いました。それに唯々諾々と付き合う主人公がエロゲ主人公過ぎてどうなの、というのはありますが…

そういう「人間らしさ」に共感を覚えていた身としては、「君のように自己完結できる人間になりたかった」という遺書は正直よくわかんなかったりする。まぁいいか…

とまぁ散々文句言ってますが、全体的には面白かったし好感が持てる作品でした。やっぱり俺はエロゲ好きなんだな…

 

 

 

君の膵臓をたべたい

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